・・・とうとう一かたまりのわかい者がなわとはしごを持って来てなわを王子の頸にかけるとみんなで寄ってたかってえいえい引っぱったものですから、さしもに堅固な王子の立像も無惨な事には礎をはなれてころび落ちてしまいました。 ほんとうにかわいそうな御最・・・ 有島武郎 「燕と王子」
・・・ 私なんかの生活の気分ではこれらの重荷を重荷として自分が押しつけられてしまわないように、自分として一番正しいと思われる方法で、それらの重荷をくくって肩へになって、になったままえいえいと歩いているような状態です。よく作家活動に関して昨今の・・・ 宮本百合子 「女流作家多難」
・・・ どうでも良いことばかり雲集している世の中で、これだけはと思う一点を、射し動かして進行している鋭い頭脳の前で、大人たちの営営とした間抜けた無駄骨折りが、山のように梶には見えた。「いっぺん工場を見に来てください。御案内しますから。面白・・・ 横光利一 「微笑」
出典:青空文庫