・・・――そのハリコフ会議の日本プロレタリア文学運動についての決議は、農民文学に関して「国内に大きな農民層を持つ日本にあっては、農民文学に対するプロレタリアートの影響を深化する運動が一層注意される必要がある。日本プロレタリア作家同盟の内部に農民文・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・しかし魔方陣のことを談るだけでも、支那印度の古より、その歴史その影響、今日の数学的解釈及び方法までを談れば、一巻の書を成しても足らぬであろう。極ごくごく小さな部分の中の小部分でもその通りだ。そういう訳だから、魔法の談などといっても際限のない・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・もしまた人生に、社会的価値とも名づけるべきものがあるとすれば、それは、長寿にあるのではなくて、その人格と事業とか、四囲および後代におよぼす感化・影響のいかんにあると信じていた。今もかく信じている。 天寿はとてもまっとうすることができぬ。・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・「戦争の影響かしら」「無論それもある。それから、君、電車が出来て交通は激しくなる――市区改正の為にどしどし町は変る――東京は今、革命の最中だ」「海老茶も勢力に成ったね」と原は思出したように。「うん海老茶か」と相川は考深い眼付・・・ 島崎藤村 「並木」
・・・ 而してかの陰陽思想は延いてわが國に及び、神代史の構成に影響すること大なりき。〔明治四十五年二月二十二日、漢學研究會の講演、明治四十五年四月『東亞研究』第二卷第四號〕 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・彼が僕に影響を与えているのか、僕が彼に影響を与えているのか、どちらかがヴァンピイルだ。どちらかが、知らぬうちに相手の気持ちにそろそろ食いいっているのではあるまいか。僕が彼の豹変ぶりを期待して訪れる気持ちを彼が察して、その僕の期待が彼をしばり・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・遠い恒星の光が太陽の近くを通過する際に、それが重力の場の影響のために極めてわずか曲るだろうという、誰も思いもかけなかった事実を、彼の理論の必然の結果として鉛筆のさきで割り出し、それを予言した。それが云わば敵国の英国の学者の日蝕観測の結果から・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・浅川も、「印刷工組合は、小野が上京してから、かえってアナの影響がつよくなったようだナ」 などというのを、古藤たちとおなじ年頃の高島はふりむきもせず、年長者のように、あぐらのひざに肘でささえた顔で、「フム」と、三吉の方だけみつめている・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ 色彩は私には大変な影響を及ぼします。太功記の色彩などははなはだ不調和極まって見えます。加藤清正が金釦のシャツを着ていましたが、おかしかったですよ。光秀のうちは長屋ですな。あの中にあんな綺麗な着物を着た御嫁さんなんかがいるんだから、もっ・・・ 夏目漱石 「虚子君へ」
・・・ラヴェッソンはシェリングの影響を受けたというが、シェリングの同一が、メーン・ドゥ・ビランの影響によって、ラヴェッソンにおいて習慣となったと考えられるのは面白い。如何に同様な考え方がドイツとフランスとによって異なるかが分る。ロックの経験論の影・・・ 西田幾多郎 「フランス哲学についての感想」
出典:青空文庫