・・・それらの、歴史の過程が私たちの現実に課す制約は、一九三三年以後すべて「セクト的な強制」というふうに感じられそれを公言することが流行となり、ヒューマニズムという旗は、無軌道な人間感情の氾濫という安易な線に沿ってひらめいたのでありました。日本の・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・又は、三時間目なら、三時間目の哺乳と哺乳との間を抜けて、自分でなければ分らない用事を果す為に外出する。一体、あちらでは、立ち上る位までになった子でない、ほんの嬰児は、多くの場合、彼等の小さい揺籃の中に臥されています。母親は傍に椅子を引寄せて・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 言論の自由を奪うということは、ただそのときその人がいおうとしている意見をひっこめさせる役割を果すだけではない。思うことのいえない人間はだんだん無気力になり自分で判断しようともしない無責任になれて来る。社会的自主性のよわいひきまわされ放・・・ 宮本百合子 「地球はまわる」
・・・そのようにして綜合し整理し、価値を明らかにした批評は、昔のロシアでベリンスキーやチェルヌイシェフスキーの文芸評論が、解放運動の強力な一環として果した革命的役割を果すはずです。蔵原惟人の評論も、佐多、松田、壺井、宮本の小説も、新しく書き出した・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・山口シヅエという婦人代議士は、公約を果すといってバケツを下げてビラはがししている。代議士の仕事は、そこにはないはずである。東京都が市街の清掃位出来るように努力してゆくことこそ代議士の仕事である。同一労働に同一賃銀を云う婦人代議士もある。しか・・・ 宮本百合子 「春遠し」
・・・ 新協の存在の価値と業績とは過去十数年の間に値打の高い発展をとげて来ているが、ますます困難を加える健康な文化・芸術確保の任務を果すためには、更にひろい客観的関係の中にその活動の質と力とを突きはなして観ることが、成長のために必要なのではな・・・ 宮本百合子 「一つの感想」
・・・な運動というものが、真の精鋭のみの小団結ではなく、そのものの周囲に幅広く種々雑多の人間を引きつれて、塵埃も残滓もそれぞれの時代の歴史性に従って残しつつ更に大きなプラスを持って積極的な進歩のための役割を果すものである。一人一人の人間として見れ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・をふくむ一連の作品が闘争の階級的武器として一定の役割を果すことを信じています。 国際帝国主義によって反ソデマがますます活溌にまかれるとき、題材は第二次大戦前にとられているにしろ、ソヴェト同盟そのものに対する信頼をひろめ、そのことによって・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・ この場合、松田氏は、自身の創作的態度をますます今日の現実の核心に触れ、作品を通じて更に現実に働きかえす力をもつものとするよう、階級的な作家として必要な鍛練を自身に課す気組みにおいて云っておられるのは明らかなことと思う。 この短い文・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・何故ならば、今日、世界の文学を通じて、何等かの意味で進歩的な役割を果す作品というものは、とりも直さず今日の社会を構成する多数者の生活感情、利害にふれたもの以外にあり得ない。そして、この世界の多数者をなしている男女の生活は自分の疲労の上に生き・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
出典:青空文庫