・・・ 香川県は、全国で最も弾圧のひどい土地だ。第一回の普選に大山さんが立候補した。その時、強力だった農民組合が叩きつぶされた。そのまゝとなっている。 なんにもしない、人間を、一ツの警察から、次の警察へ、次の警察から、又その次の警察へ・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
明治三十一年十二月十二日、香川県小豆郡苗羽村に生れた。父を兼吉、母をキクという。今なお健在している。家は、半農半漁で生活をたてゝいた。祖父は、江戸通いの船乗りであった。幼時、主として祖母に育てられた。祖母に方々へつれて行っ・・・ 黒島伝治 「自伝」
・・・と先生が感服致します。賀川豊彦でなくても死線が現われました。 あなたがひどくお悪かったあと、髪がうすく軽くなって、向い会っていると頭の地がすけてみえて本当に吃驚したことがありました。絞りの着物を着て、やっと歩いて出ていらしてお腹を落して・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 船客の中には賀川豊彦氏も交っていて、この宗教家はアメリカなどでは大した信頼をつながれている人だそうだが、恐らくその小説の中で同様の事件があったのなら、何かの形で正義と人間愛の演説をされる機会を持たれただろうが、現実に自分の足の下の暑苦・・・ 宮本百合子 「龍田丸の中毒事件」
出典:青空文庫