・・・最初の手紙を差上げる時も、あの「格言」が気になってなりませんでしたが、今度は前よりも一層心苦しゅうございます。 女の手紙は書いてある文句よりは、行と行との間に書かずにある文句を読まなくてはならないと云うのは、本当の事でございましょう。そ・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・ そこでこの格言の意味は、もしも誰かが一つこんな工合のうそをついて、こう云う工合にうまくやろうと考えるとします。そのときもしよくその云うことを自分で繰り返し繰り返しして見ますと、いつの間にか、どうもこれでは向うにわかるようだ、も少しこう・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・ということについて注意をよびおこしたのは、実に意味ふかいことであった。君たちの時間はどう使われているか、ときかれたとき、二十四時間の大部分が、労働のため「時は金なり」という格言を一分も忘れない企業家の利益のために使われていることの人間らしく・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・或る種の作家は孤独にあってなし得る時代に対する道徳上の確言があることを強調しているのである。 世界文学の視野にヒューマニズムの問題が現れたのは一九三〇年からであった。然し一九三四年という年は二月のパリ騒擾事件におけるファシストの狂暴を契・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・という同じ人の格言通り、彼女の霞んだ、近眼が見るには可哀そうなほど、深い深い奥にその解答はあるのである。 彼女は、おぼろながら、それを自覚した。もう言葉の、魅力や完全さは望まない。それを自分の胸に感じ、魂に知り、ちょうど疲れたとき、・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ロシア人はこんな格言を持っている。 ――ポーランド人はなんにもない所から立派なズボンをこしらえる―― つまりとてもコスイ、油断がならぬと云うわけだ。もっともこのポーランド人の猾さには、ながい政治的な理由が背景となっている。 帝政・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫