・・・一沈一浮共に苦楽を同うす可しと雖も、其夫の品行修らずして内に妾を飼い外に花柳に戯れ、敢て獣行を恣にして内を顧みざるが如きは、対等の配偶者を侮辱し虐待するの罪にして断じて許す可らず。内君たる者は死力を尽して之を争う可し。世間或は之を見て婦人の・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ただに兄のみならず、前年の養子が朝野に立身して、花柳の美なる者を得れば、たちまち養家糟糠の細君を厭い、養父母に談じて自身を離縁せよ放逐せよと請求するは、その名は養家より放逐せられたるも、実は養子にして養父母を放逐したるものというべし。「父子・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・これを要するに、今の紳士も学者も不学者も、全体の言行の高尚なるにかかわらず、品行の一点においては、不釣合に下等なる者多くして、俗言これを評すれば、御座に出されぬ下郎と称して可なるが如し。花柳の間に奔々して青楼の酒に酔い、別荘妾宅の会宴に出入・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截って来る冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。 イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずいぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはずれに居る人・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
・・・ 学校の少し下流で谷川をわたって、それから岸で楊の枝をみんなで一本ずつ折って、青い皮をくるくるはいで鞭をこしらえて手でひゅうひゅう振りながら、上の野原への道をだんだんのぼって行きました。みんなは早くも登りながら息をはあはあしました。・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・向う岸もまた黒いいろの崖が川の岸を下流に下るにしたがってだんだん高くなって行くのでした。そしてちらっと大きなとうもろこしの木を見ました。その葉はぐるぐるに縮れ葉の下にはもう美しい緑いろの大きな苞が赤い毛を吐いて真珠のような実もちらっと見えた・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・石とりやめて、早くみんな、下流へさがれ。」そこでみんなは、なるべくそっちを見ないようにしながら、いっしょに下流の方へ泳いだ。しゅっこは、木の上で手を額にあてて、もう一度よく見きわめてから、どぶんと逆まに淵へ飛びこんだ。それから水を潜って、一・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・永井荷風は往年の花柳小説を女給生活の描写にうつした「ひかげの花」をもって、谷崎潤一郎は「春琴抄」を、徳田秋声、上司小剣等の作家も久しぶりにそれぞれその人らしい作品を示した。そして当時「ひかげの花」に対して与えられた批評の性質こそ、多くの作家・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・然しながら、妻が、泥酔した夫や花柳病にかかっている夫との性的交渉を拒絶すべき母として当然の権利を、擁護してはいないのである。性別は染色体の問題であることを私達は知っている。染色体はそれを包蔵する細胞の健康状態と勿論結びついた関係にある。互に・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・tari. 周囲の人 母 好人物 ドメスティック 弟 山雄 富次郎 バチェラー一族 姉 浪花節語り K、Sの性格 ○小さい時から花柳界に育ち男をだますのを手柄と思って居・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
出典:青空文庫