・・・そういう社会生活の上に生じた笑いの欲望につづいて、五年間ソヴェト同盟が耐えて来たナチとの闘争は、七百万人の命を犠牲とする苛烈なものであった。永い忍耐のいるこの血闘は勝利で終った。ソヴェト市民は、そのときにあたってどんなに気分の快い転換を欲し・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・けれども、人民生活と文学との苛烈さは、「朝鮮ヤキ」のすぐれた作品を最後として譲原昌子を結核にたおした。新しく書きはじめている婦人たちの文学は、早船ちよをやや例外として、まだその大多数が、小規模の作品に着手しはじめたという段階である。題材と創・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ 社会情勢の波瀾が内外の圧力で純文学末期の無力な自我から最後の足がかりを引攫おうとしたとき、そのような苛烈な現実を歴史的な動きの中に把握してゆく精神を既に喪っていた自我がそれぞれのとりいそいだ転身の術によって自ら歴史の中に立つ気力を失っ・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・しかし、作者は自身の気構えのつよさに現実の苛烈さを錯覚しているところもある。志賀直哉氏の人為及び芸術の魔法の輪を破るには、志賀氏の芸術の一見不抜なリアリティーが、広い風波たかき今日の日本の現実の関係の中で、実際はどういう居り場処を占めている・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・その芸術必然の人間的真情が歴史と文学との深刻苛烈な葛藤にいかに処しつつあるかが、日本とはかぎらず世界を一貫して現代文学の課題なのであると思う。〔一九四一年五月〕 宮本百合子 「歴史と文学」
・・・二つの世界大戦を経て、地球上には、より新しい民主勢力が拡大し、人類の理性は、ますます苛烈な実践をもとめられ試煉を経つつあります。 人類の理性の集積は、精煉に精煉を重ねて、つみあげられてゆくものです。理性が理性であることを証明するため・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
出典:青空文庫