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・・・自由恋愛が作品に現われたことがあるとしても、それは一時西洋で姦通小説だの、姦通脚本だのというものが問題になっていたと同じことで、真の芸術の消長には大した影響はない。 近ごろは自然主義ということが話題に上ることが少なくなって、その代りに個・・・
森鴎外
「文芸の主義」
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・・・マダム・ボヴァリーを読んで姦通を煽動されるとか、ロダンの「接吻」を見て肉欲を刺戟されるとか、そういう場合はあるに相違ない。題材が恋愛、性欲等であり、その題材自身が不倫な恋や肉欲の興味をそそり得る場合には、確かに風俗壊乱という影響を公衆の或る・・・
和辻哲郎
「蝸牛の角」