・・・末弟は、更にがくがくの論を続ける。「空論をお話して一向とりとめがないけれど、それは恐縮でありますが、丁度このごろ解析概論をやっているので、ちょっと覚えているのですが、一つの例として級数についてお話したい。二重もしくは、二重以上の無限級数の定・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・落ちついた振りをしていても、火燵の中の膝頭が、さっきからがくがく震えているじゃありませんか。」「けしからぬ。これはひどく下品になって来た。よろしい。それではこちらも、ざっくばらんにぶっつけましょう。一尺二十円、どうです。」「一尺二十・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・私は、それでも新進作家らしく、傲然とドア近くの椅子に腰かけたのであるが、膝がしらが音のするほどがくがくふるえた。私の眼が、だんだん、うすくらがりに馴れるにしたがい、その少女のすがたが、いよいよくっきり見えて来た。髪を短く刈りあげて、細い頬は・・・ 太宰治 「断崖の錯覚」
・・・僕は、純粋の人間、真正の人間で在りさえすれば、―― などとあらぬ覚悟を固めたりしはじめて、全身、異様な憤激にがくがく震え、寒い廊下を大胯で行きつ戻りつ、何か自分が、いま、ひどい屈辱を受けているような、世界のひとみんなからあざ笑われている・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・と言いましたが、からだはやはりがくがくふるえていました。 そしてみんなは、雨のはれ間を待って、めいめいのうちへ帰ったのです。 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹き・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
出典:青空文庫