・・・ そして、この外見には同じような二つの現象が、その根源においては、決して同一のものの上に立っていないという発見に到着したのであった。 忌憚ない言葉を許されるならば、『朱実作品集』は、作者が題材に向って勇敢になれなかったところから長篇・・・ 宮本百合子 「二つの場合」
・・・ チェホフが、彼の敏感と人間らしい良心によって、当時一部のロシア・インテリゲンツィアに対して抱いていた忌憚ない反撥と、ゴーリキイが勤労者としての本性によってインテリゲンツィアの中に、有用なものと不用なもの――むしろ有害なものとを嗅ぎわけ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ 本間氏も久美子さんたちも、職業に対する見解に忌憚なく云えば生ぬるいところを持ちつつも、職業の選択については、社会的な或る正義感を抱いておられることは意味ふかいことであると思った。 私は、聰明な久美子さん達がいかなることがあろうと救・・・ 宮本百合子 「短い感想」
・・・日本のラジオの組織やプログラムの内容が、今日の民衆に対して、益々自発的見解を社会事象に対して忌憚なく表明させるような方向へ作用しているか、否かを公平に省察すると共に、聴取者は素直に、積極的に、中央放送協会によって公言されている次の態度を身に・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・ 親しい友人から受けた忌憚なき非難は、かえって私の心を落ちつかせた。烈しい苦しみと心細さとのなかではあったが、自分にとっての恐ろしい真実をたじろがずに見得た経験は私を一歩高い所へ連れて行った。私は黒い鉄の扉に突き当たったが、自分の力で動・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫