・・・(徳川をはじめとして諸藩にても新に寺院を開基し、または寺僧を聘 また近時の日本にて、開国以来大に教育の風を改めて人心の変化したるは外国交際の刺衝に原因して、その迅速なること古今世界に無比と称するものなれども、なおかつ三十の星霜を費し、然・・・ 福沢諭吉 「政事と教育と分離すべし」
・・・ 今試みに社会の表面に立つ長者にして子弟を警め、汝は不遜なり、なにゆえに長者につかえざるや、なにゆえに尊きを尊ばざるや、近時の新説を説きて漫に政治を談ずるが如きは、軽躁のはなはだしきものなりと咎めたらば、少年はすなわちいわん。君は前年な・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・ 欧州近時の文明は皆、この物理学より出でざるはなし。彼の発明の蒸汽船車なり、鉄砲軍器なり、また電信瓦斯なり、働の成跡は大なりといえども、そのはじめは錙朱の理を推究分離して、ついにもって人事に施したる者のみ。その大を見て驚くなかれ、その小・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・道後の旅店なんかは三津の浜の艀の着く処へ金字の大広告をする位でなくちゃいかんヨ。も一歩進めて、宇品の埠頭に道後旅館の案内がある位でなくちゃだめだ。松山人は実に商売が下手でいかん。」「なるほどこりゃ御城山に登る新道だナ。男も女も馬鹿に沢山・・・ 正岡子規 「初夢」
○ベースボール に至りてはこれを行う者極めて少くこれを知る人の区域も甚だ狭かりしが近時第一高等学校と在横浜米人との間に仕合ありしより以来ベースボールという語ははしなく世人の耳に入りたり。されどもベースボールの何たるやはほとん・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・またそれらのはなしが金字の厚い何冊もの百科辞典にあるようなしっかりしたつかまえどこのあるものかそれとも風や波といっしょに次から次と移って消えて行くものかそれも私にはわかりません。ただそこから風や草穂のいい性質があなたがたのこころにうつって見・・・ 宮沢賢治 「サガレンと八月」
・・・がっしりとした門にソヴェト同盟の国標、鎚と鎌をぶっちがえにしたものを麦束でとりかこんだ標がかかげてあり、その上に、ドン国立煙草工場と金字で書いてある。門衛がいるが、一向意地わるそうでもないし、うたぐり深い目つきもしていない。「受付はどこ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・論説を書いた人々は社会の木鐸であるというその時分愛好された表現そのままの責任と同時に矜持もあったことだと思う。或人は熱心に、新しい日本の黎明を真に自由な、民権の伸張された姿に発展させようと腐心し、封建的な藩閥官僚政府に向って、常に思想の一牙・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・とただし書を添えながら、元来友情は、お互が対等であって互に尊敬し合うことのできる矜持ということが重要な契機であるから、奴隷や暴君が真の友情をもち得ないということの強調としていられるのであった。 今の時代の生活の感情のなかに受けとって味わ・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・という文句が金字で打たれている。 今から十七年前、帝政ロシアの資本家・地主と僧侶の支配下のロシアで、勤労大衆のために中等教育施設がどんなものだったかは次の表を見ても明かだ。一九一四年度ロシアの中学校、実務学校、予備学校における学・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫