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・・・ 橙色の柳縹子、気の抜けた肩を窄めて、ト一つ、大きな達磨を眼鏡でぎらり。 婦は澄ましてフッと吹く……カタリ…… はッと頤を引く間も無く、カタカタカタと残らず落ちると、直ぐに、そのへりの赤い筒袖の細い雪で、一ツ一ツ拾って並べる。・・・
泉鏡花
「露肆」
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・・・するとすぐ頭の上の二階の窓から、大きな灰いろの顔が出て、めがねが二つぎらりと光りました。それから、「今授業中だよ、やかましいやつだ。用があるならはいって来い。」とどなりつけて、すぐ顔を引っ込めますと、中ではおおぜいでどっと笑い、その人は・・・
宮沢賢治
「グスコーブドリの伝記」