・・・ ちょっと受ける感じは、野放図で、ぐうたらみたいだが、繊細な神経が隅々まで行きわたっている。からだで掴んでしまった現実を素早く計算する神経の細かさ――それが眼にあらわれていると思った。 その部屋には、はじめは武田さんと私の二人切りだ・・・ 織田作之助 「四月馬鹿」
・・・尤も僕がぐうたらであって、こちらへ行こうと彼がいうと其通りにして居った為であったろう。 一時正岡が易を立ててやるといって、これも頼みもしないのに占ってくれた。畳一畳位の長さの巻紙に何か書いて来た。何でも僕は教育家になって何うとかするとい・・・ 夏目漱石 「正岡子規」
・・・がパンセラスの仕事を督励したとは別の方法で、言葉で、宝石の沢山はまった奇麗な白い手で、恐らくはツルゲーネフの芸術活動と、その成功を刺戟し、部分的には精神的共働者でもあったであろう。ぐうたらなツルゲーネフが「全生涯を通じて、少年時代の自由の信・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・「先生とこの奥様もこの上なしのぐうたらですぺ。朝から晩まで流しの上には、よごれものがたまって新らしい茶碗の縁が三日と無疵で居たためしがないとなあ、三十九にもなって何てこったし、あまり昼、夫婦づれで、仮寝ばかりしているからだなっし、貴・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫