・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・その他日本的な種々雑多な因子としている上に、将来日本が憲法をかえてさえ再武装するかもしれないという信じがたいほどの民族的苦痛の要因に重くされている。 わたしが生活と文学とにコンプレックスを全然持たないか、或は極く少くしかもたない女だとい・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・民主日本の発展の途上に、一種の反対勢力として権謀的に培養されている軍国主義の暗いうごめきを、婦人の心の正直さは明瞭に拒んで行かなければならない。〔一九四八年一月〕 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・英国のあらゆる国家的、個人的美徳、老獪、権謀がこの煤けた八本の大柱列内部で週給六十四シリング以下三四十シリングの男女行員達のペンにより簡単明瞭なる「借」「貸」に帰納されつつある。背後に「東端」がひろがり始めていようとも英蘭銀行の正面は広大だ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・色とりどりの可憐さ、鮮やかな性格と情熱と才智とで、男の政治、経済の波瀾、権謀の中に交錯してゆく女の姿が描かれている。 近代国家イギリスを盛立てたエリザベス女皇の時代の社会の文学として、シェークスピアが、古代ギリシャ文学などに女が運命の神・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
・・・彼を生き難くさせたのは、彼が理性と真実とについて抱いていた観念の内容と構成とが、権力の動員した、権謀の詭弁との格闘に堪えなかったからでありました。 四月二十三日の週刊朝日「菅証人はなぜ自殺したか」という記事は、特別調査委員会における・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
・・・そしてその統一に、一つの有利な条件をつけるために、京都において政権を喪い、窮乏していた天皇の一族に経済的援助を与え、旧藤原一族の権謀慾をしずめようとした。 これは秀吉の時代にも自己の権力の利益を護るために踏襲された方法であった。政治の実・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・またそれがこの地のさだめかという代りに「それがこの鉱泉の憲法か」などいう癖あり。ある時はわが大学に在りしことを聞知りてか、学士博士などいう人々三文の価なしということしたり顔に弁じぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれを傷けんとお・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・この心持ちが、憲法発布以後に生まれた我々に、そっくりそのまま伝わって来ないのは当然である。我々は物を覚え始める最初から皇室を日本の絶対的主権者として仰いでいる。この皇室を守るために、国内の他の勢力に対して反抗するというような情熱は、切実に起・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫