・・・利潤を追い求める企業としてのあらゆる性格と方法とを備えて来て、どっさりの金を出す広告は気狂いじみた権利を紙面に主張するようになった。各新聞の古風な商売仇的競争も、商品としての新聞の売行きのために激しく鼓舞され、記者たち一人一人の地位は、木鐸・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・ロシアのツァーリズムの絶対主義政治、ドイツのカイゼルの軍国主義政治その他中欧諸国で皇国とか、国王とかは、急速により民主的な権力に交替した。その中で社会生産のしくみまでを進歩させて、より人民の多数の生活向上の目的に沿う可能性がますような社会主・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・は雀躍して皇国に殉じることを名誉と感じて疑わないように。妻子父母は、国のために、不幸を名誉としてよろこばなければならない。宮様と同じ隊であった息子が、前線で戦死したことを息子の余栄として、皇后の巻かれた繃帯で、わが良人、わが子のもがれた手足・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・ 寒山詩が所々で活字本にして出されるので、私のうちの子供がその広告を読んで買ってもらいたいと言った。「それは漢字ばかりで書いた本で、お前にはまだ読めない」と言うと、重ねて「どんなことが書いてあります」と問う。多分広告に、修養のために・・・ 森鴎外 「寒山拾得縁起」
・・・を真価以上に広告し、すべての他人を凌駕し得たりと自負するに至ッては最も醜怪、最も卑怯なる人格の発露である。虚栄の権化は時に人を威圧して崇敬の念を起こさしむ。神にも近しと尊ぶ人格は時に空虚である。真の偉人は飾らずして偉である。付け焼き刃に白眼・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫