・・・下岡蓮杖の功績が新しく人々の科学常識の間にとりいれられたのは結構であったし、カメラを愛好する若い人々にとって、ターキーの舞台姿のポーズをとられたのも、鎌倉の波うちぎわで舞う女の躍動をうつせたのも、楽しいことの一つであったにちがいない。 ・・・ 宮本百合子 「カメラの焦点」
・・・の大衆は、今度は臨時政府を投げ倒し、プロレタリア階級の党、ロシア共産党と力を揃えて「十月」を遂行したのだ。 一九一七―二一年の困難な国内戦の期間、農民がうけもった革命的役割は「赤のパルチザン」の功績にハッキリと現れている。 ソヴェト・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ この文学運動が日本文学にもたらした消えざる功績は、文学作品の社会性についての見解と、文学を大衆にとって、買って読まされていたものから、自分たちの生活から生み得るものという理解に立ち到らせたこと、及び過去の所謂教養というものを身につけて・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・この自然主義の試みは健康な一面の功績を残したが、今日では常識のうちの理性が成長しているから、自然現象と人間の社会現象の質のちがい、そこに関係して行く人間の意味の相異もはっきり区別されて理解されている。 従ってどのような作家が、どのような・・・ 宮本百合子 「人生の共感」
・・・薄色の髪の毛を簡単な断髪にして、黒っぽい上衣の胸に、彼女の功績を語る勲章がさげられている。衿もとには、昔のソヴェトに決して見られなかった美しいレースの衿がのぞいている。オルガ・ベルホルツの写真の中の顔は、私たちを感動させる表情をたたえている・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・グループはそれぞれに別個だし、編輯方針の細部でもそれぞれのある独自性を発揮しつつ、たとえば『文学評論』はすでに第二巻に進み、綜合的な文化雑誌『文化集団』はこの一月第三巻第一号までを発行し、各々意義深い功績をあげている。 このことからある・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・、たとえばナターリアの小さい行跡が記録されないと同じく記録されない革命的プロレタリアートの行跡によって獲得されたものであることを。ペテログラードはレーニングラードに変った。そこにやはり記録されざる個々の行跡の偉大な堆積がある。 ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ 一八六一年に書かれたこの『母権論』の功績は、著者バッハオーフェンが自身の神秘的な観念に制約されつつも、熱心にギリシア、ローマ等の古典文学を跋渉し、章句を引用し、彼以前には、全く空白に等しかった先史の分野に、一夫一婦制以前の社会が単に無・・・ 宮本百合子 「先駆的な古典として」
・・・同志小林の功績は、実にプロレタリア文学運動におけるその如き党派性、その如き科学性の確立のために、決議の作成へまで発展的にしかも飽くまで厳密にわれわれを批判し、鼓舞激励したところにこそあるのである。 貴司は『改造』四月号の「人及び作家とし・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・―― ――そりゃ数のなかだもの、つまらないんだって、ばからしいのだってあるさ。功績ある共産党の中にだって一人一人見ればいやな奴がいるのと同じこった。 だがね。つまらない、下らないというのもいろいろだよ。芸術的な技術が下手で、捕えた・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫