・・・そのように、小説をかく婦人と児童のために書く婦人とは、めいめいの文学の天質のちがいに立っているのであって、程度の高低だの資質の貧富によるのでないということが、はっきりされて来なければならない。 そして、このような成長も、考えてみれば、つ・・・ 宮本百合子 「子供のためには」
・・・あらゆる形で大衆課税がとりたてられ、たとえ所得税の税率がいくらか引き下げられたとしても、汽車賃の二倍半までの増額、公定価格の七割ほどの引上げ、通信料の四倍、煙草の二割から八割の値上げは、あらゆる家計を破綻させている。とくに本年度の悪質大衆課・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・当時の微妙な情勢は、従来のプロレタリア文学の専門技術家の多数がその生活態度と文学との上に拠りどころを失って、批判の欠けた文学をつくり出し、所謂文壇の拍手の高低によって心持を左右されることの少くないようなのに対して、一般民衆の裡にあるプロレタ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ この年は佐佐木信綱博士の万葉集校訂の大事業が完成して注目をひいたが、従来、国文学者は不思議にも日本の国文学として今日の文学作品までがその研究の分野にとり入れられなければならないという、極めて当然な動きから、かたく身を退いて来た。彼等の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ ところが、他の一面に近頃ではいろいろの軍需工場に多数の女が働いているし、その農村の工業化の問題においても、専門家大河内子爵は、機械製造工程の発達した現在にあっては、安い賃銀の農村の娘が、たやすく、自動車の部分品をも作り得るから、農村工・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・その意味で、生産の現実事情が、集団間の関係としての政治をきめたし、歌うこころもちの波の高低も、おのずから、その社会の生きるやりかたによって、ニュアンスをちがえたことは疑えない。人間社会では、自覚されるされないにかかわらず、客観の事実として、・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・不幸な露国皇帝が彼の死を死んだ運命の尖端 其から御飯を食べ、又少し本を見て、今改めて机に向った私は、もうすっかり先刻の重圧からは脱して、活気に満ちた心と、頭とを持って居ります。本が面白かった許りではなく、僅かな時の間に、彼程退屈だった雨・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ワグナーがオペラをプロシア皇帝の治世の具として自薦したとき、はっきりそのことを云った。それでニーチェは、ワグナーと絶交したのだった。〔一九五一年一月〕 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・これも原因の一つである。公定価格がきまった途端に品物は消滅してしまった。これも原因の一つを示している。 あれこれの理由で野菜が消え去ったとなって、市民のそれに対する対策はどんな方法で行われているかというと、やはり実に個人的にやられている・・・ 宮本百合子 「主婦意識の転換」
・・・生活必需品の値上げについて賃上げ要求をして七百円から千五百円になり、千八百円ベースの今日、物価はぐっと高くなり公定価も上って、とても千八百円ベースではやって行けなくなっている。つつましく暮して四人家族で五千六百円ばかりかかる現実となった。大・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
出典:青空文庫