心に入る
(「入る」が四段活用の場合) 1 心に深くしみる。「何故 (なにゆゑ) か思はずあらむ紐 (ひも) の緒の—・りて恋しきものを」〈万・二九七七〉 2 気に入る。心にかなう。「なのめならず—・りて思ひいらるるもはかなし」〈源・総角〉 3 納得する。よくわかる。「西へ行く月をやよそに思ふらん—・らぬ人のためには」〈山家集・中〉 (「入る」が下二段活用の場合) 1 深く心に留める。熱中する。「学問に—・れて、遊びの道にも入りたち給へる時に」〈宇津保・藤原の君〉 2 関心を持つ。親身になる。「算を—・れて教へけるに」〈今昔・二四・二二〉
心に鬼を作る
1 恐怖のあまり無用な想像をする。「—・りて、左右なく近づかず」〈古活字本保元・下〉 2 やましいことがあって悩む。「隠れみのうき名を隠すかたもなし—・る身なれど」〈新撰六帖・五〉
心に掛かる
1 ある事柄が心から離れないでいる。気に掛かる。「留守中は子供のことが常に—・っている」 2 人の厚意にすがる。「ただかばかりの御—・りてなむ多くの人々年を経ける」〈源・初音〉
心に垣をせよ
油断をしないで用心せよ。用心を怠ることのないようにといういましめ。
心に掛ける
1 心にとどめる。念頭におく。「いつも—・けていただき感謝しています」 2 目をかける。懸想 (けそう) する。「天武の—・けさせ給へば、清み原にめされて」〈胆大小心録〉 3 心にまかせる。思いのままにする。「はばかり給ふ事なくて、…ただ御—・けてもてなし給ふべくぞ」〈源・若菜上〉
心に笠着て暮らせ
《笠をかぶると上が見えないところから》高望みしないで分相応に暮らせ。
心に適う
1 気に入る。満足に思う。「お—・うように努力します」 2 思いどおりになる。心のままになる。「命だに—・ふものならば何か別れの悲しからまし」〈古今・離別〉
心に刻む
深く心に留めて忘れない。肝 (きも) に銘じる。「師の言葉を—・む」
心に染む
(「染む」が五(四)段活用の場合)気に入る。心にかなう。「—・まない結婚をすすめられる」 (「染む」が下二段活用の場合)深く心を寄せる。傾倒する。「皆人の—・むる桜花いくしほ年に色まさるらむ」〈千載・春上〉
心に付く
(「付く」が四段活用の場合)気に入る。心にかなう。「かたちはしもいと—・きて、つらき人の慰めにも見るわざしてむやと思ふ」〈源・少女〉 (「付く」が下二段活用の場合)心を寄せる。関心をもつ。「この受領どものおもしろき家造り好むが、この宮の木立を—・けて」〈源・蓬生〉