・・・而してそれが道徳の根源となる。国家主義と単なる民族主義とを混同してはならない。私の世界的世界形成主義と云うのは、国家主義とか民族主義とか云うものに反するものではない。世界的世界形成には民族が根柢とならなければならない。而してそれが世界的世界・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・我々は歴史的実践の世界においての論理的意識発生の根源に返って、歴史的実践の世界の自己形成の論理を把握せなければならない。それはヘーゲルの理念的弁証法と逆の立場に立つものであろう。歴史的世界の自己形成においては、形相と質料とが何処までも相反す・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・しかし今や我々は自己矛盾性の根元に返って、真の矛盾的自己同一の立場から出立せねばならぬと思う。そこに東西文化の融合の途があるのである。而して私は東洋文化から発展した我々の日本文化の精神には絶対現在の自己限定として、現実即絶対的に矛盾的自己同・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・万古不易の金言、思わざるべからず。 さてまた、子を教うるの道は、学問手習はもちろんなれども、習うより慣るるの教、大なるものなれば、父母の行状正しからざるべからず。口に正理を唱るも、身の行い鄙劣なれば、その子は父母の言語を教とせずしてその・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・ 女中に「抜毛を竹の根元に埋めると倍になって生えるそうだ」と母が「裏の姫竹の根に埋めておやり」と命じた。 女中はハイハイとうけ合って居たっけがそのまんま忘れて午後になって見ると大根の切っ端やお茶がらと一緒に水口の「古馬けつ」の中に入・・・ 宮本百合子 「秋毛」
・・・報告文学の人間的要求の根源はここにあった。新しい社会性の上に立って文学の仕事に進もうとする人々に、スケッチや報告文学をかくことから導いているプロレタリア文学の方法は、この意味で文化の現実に即し、新たな文化のヒューマニズムに立っているのである・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・生の根源というものは、どんな歴史の現実に深く根をおろしているものであるかということの証拠であると思う。小船は、一つ一つの波にはゆられているが大局からみればちゃんと一定の方向で波全体を漕ぎわけてゆく。そのようにわたしたちは、起伏する社会現象を・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・こんもり高くして置いた青紫蘇の根元の土でさえ次第に流され、これは今にも倒れそうに傾きかけるものさえ出て来た。―― 私は小さい番傘をさし、裸足でザブザブ水を渉り花壇へ行って見た。保修工事が焦眉の問題であった。私は苦心して手頃な石ころを一杯・・・ 宮本百合子 「雨と子供」
・・・ 後年、有島武郎が客観的に見れば平凡と云い得る女主人公葉子に対して示した作家的傾倒の根源は既に遠い昔に源をもっていることを理解し得るのである。 作者が独立教会からも脱退し、キリスト教信者の生活、習俗に対して深い反撥を感じていた時・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・ こういう文化上の悲劇、作家一人一人の運命についていえば目もあてられない逆立ち芸当をつとめるにいたった理由は複雑であろう。根源には、日本の近代社会のおくれた本質が、作家の全生活に暗く反映している。跛な日本の経済事情そのものから生じて・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
出典:青空文庫