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・・・章子はひろ子の魂胆を感づいたのであった。ひろ子も笑い出したが、「本当よ、でも」と力を入れて云った。「そか? どれ」 章子は座布団ごとそばへずりよって来た。「どうです女将さん、当りますか」 片手をひろ子に執られたまんま・・・
宮本百合子
「高台寺」
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・・・同志今野がそのまま死ねば三日か四日のうちにそれほど病が悪化したとでもいいのがれる魂胆であったのでしょう。 同志今野は三回目の大手術をうけ、まだ生きるか死ぬかの境にいる。どんなことをしてもわたしたちの力でこの忠実な同志の命を奪いかえさねば・・・
宮本百合子
「ますます確りやりましょう」