・・・「なるほど、茶法の極意を和敬清寂と利休のいったのに対して、それを延して、人に見せるがためにあらず自己の心法を観ずる道場なりと変化さし得て今に至ったことは、ここに何事か錯乱を妨ぐ精神生活者の高い秘密がある」と直覚した久内に、全く賛同しているの・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・その下に体の大きい重吉がはげた赭土色の獄衣を着て、いがぐり頭で、終日そうやって縫っている。重吉の生きている精神にかけかまいなく、それが規則だからと、朝ごとに彼に向ってぶちこまれるボロ。どんな物音も立たない、機械的な、それだから無限につづいて・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 四 今日の勘 芸術諸般の極意に達する心理的、生理的な過程を、日本人は勘という表現であらわして来た。ある程度までは説明がつく、それから先は勘でのみ会得されるものだ、そこにその道の極意は秘せられている。そういう意・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
出典:青空文庫