・・・民族間の戦争を誡め、平和を説いたものであるが、文字に書かれた、恐らく最古のものであろう。旧約にはいっている。しかし、そういう昔のことにまでかゝずらっているヒマがない。近代文学には、明かに、戦争反対の意図を以て書かれたものを相当拾い上げること・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ 竪琴の最古のものはテーベの墓の壁画に描かれたものだそうで恐ろしく古いものらしい。アッシリアのものはわずかに極東日本にその遠い子孫を残すに過ぎないと思われていたが、同じようなものが東トルキスタンで発見されたそうである。これははなはだ意味・・・ 寺田寅彦 「日本楽器の名称」
・・・当時上野なる新公園の状況を記述するもの箕作秋坪の戯著小西湖佳話にまさるものはあるまい。 箕作秋坪は蘭学の大家である。旧幕府の時開成所の教官となり、又外国奉行の通訳官となり、両度欧洲に渡航した。維新の後私塾を開いて生徒を教授し、後に東京学・・・ 永井荷風 「上野」
・・・又、ともに最古の原始をも愛し、憧れる。野を愛し、部族の生活を思い出し単純に、純朴にと一方の心は流れ囁く。而も、一方は無限の視覚、聴覚、味覚を以て細かく 細かく、鋭く 鋭くと生存を分解する、又組立てる。・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・大浦天主堂は日本最古の建築、浦上のは最大の建物だ。浦上の切支丹信徒が経験した受難の種々は世に知られている。この建物も、始め起工した時から近年完成する迄には数十年を閲し、信徒の中には、自分の息子を大工、左官に仕立てその労力を献じて竣工させたと・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫