・・・ 平凡な田舎の景色と、横の空いた座席に投げ出されているアルマの箱と、尾世川自身の声の中に何かつつましき祝祭が燦いてい、藍子も軽やかな心持であった。 葦が青々茂っている。その川の上に鉄橋が見える。列車が轟然とその鉄橋をくぐりぬけた。・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・ゴーリキイは間もなくイタリーへ戻り、一九三二年に再びソヴェトへ帰った時には彼は全くロシアで生涯を終る決心をもって帰り、世界的に祝われた文学生活四十年の祝祭を機会にゴーリキイは六十四歳の老齢にも拘らず、その精神力に於て最も若々しい新世界建設者・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・しかし、もし死んだとしても、彼は歴史の一つの祝祭の中に葬られる。これは美しいよろこびにみちた生涯の結びでなくて何であろうか。そう思い、そしてゴーリキイの馴染み深い、重い髭のある顔と、広い肩つきとを思い浮べるのであった。 一九三二年以後の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・事から動かされた自分の感情のうちに、ゴーリキイが自分の生涯の終りに於てこの輝かしい日に遭遇したということを思い合せ、ゴーリキイは出来るだけ生かしておきたい、しかし、もし死んだとしても、彼は歴史の一つの祝祭の中に葬られる、これは美しいよろこび・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・ ソヴェト同盟で、街じゅうが赤旗で飾られるのは春のメー・デー、十一月の革命記念祝祭などだ。 クリスマスそのものが、誰の降誕祭かと云えばイエス・キリストで、眼の丸かった赤坊ウォロージャの誕生日ではない。ロシア語はろくに読めないが、国立・・・ 宮本百合子 「モスクワの姿」
・・・婦人水着の新型がニューボンド通に現れるより遅くも早くもない時に游泳祝祭を。そして、貧しき母の為の産院寄附金募集には上流貴婦人連が各自家重代の銀器を持ち出して華々しい展覧会を開催するというグロテスクな皮肉に亢奮させられてはいけない。英国人は「・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・かれが一九三二年の文学生活四十年祝祭を記念として、ついに大衆の党の組織に結びつけられたこと、それから後の四年間にゴーリキイがおこなった文化・文学的活動のひろいこと、確信にみちていること、若々しい新社会への期待と愛に輝いていることはどうであろ・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫