愛読という言葉の普通の使いかたとは違うけれども、非常に感銘をもってよみ、人類の歴史の精髄を学んだ二つの本をあげます。 エンゲルス著「家族・私有財産及国家の発生」 同 「空想から科学へ」 前者は、題名がこ・・・ 宮本百合子 「私の愛読書」
・・・めいめいの境遇についても覚悟がきまらないと思います。 こういう苦しみは、みんな資本主義の世の中であることが原因です。めいめいの私有財産をつたえ守るために家族制度が発達して来ています。一軒の家の中だけでかたまり、儲けをこっそり一軒の家の中・・・ 宮本百合子 「「我らの誌上相談」」
・・・石田は代を払って帰った。 牝鶏を持て来た。虎吉は鳥屋を厩の方へ連れて行って何か話し込んでいる。石田は雌雄を一しょに放して、雄鶏が片々の羽をひろげて、雌の周囲を半圏状に歩いて挑むのを見ている。雌はとかく逃げよう逃げようとしているのである。・・・ 森鴎外 「鶏」
・・・よもや西洋で僕の師友にしていた学者のような、オルガニックな欠陥が出来たのではあるまい。そうして見れば飾磨屋は、どうかした場合に、どうかした無形の創痍を受けてそれが癒えずにいる為めに、傍観者になったのではあるまいか。 若しそうだとすると、・・・ 森鴎外 「百物語」
出典:青空文庫