・・・ CCの車にて見物 美くしき小家、 二十六日 L. A. を立ち、サンフランシスコ着 二十七日 Thanksgiving Day. 夜立つ 二十九日 シアトル。部屋で dinner十二月 一日 船の手・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 結婚した大町さんは、病臥生活の良人について、愛知県の田舎の町の良人の生家へゆきそこで七年以上くらした。解放運動のために健康を失い、経済的基礎もうしなった者が、そういう点で理解のとぼしい田舎町へかえってくらすこころもちには、実にいいあら・・・ 宮本百合子 「大町米子さんのこと」
・・・けれども、そこから生れた後味、それによってこそ行進した方の真の感激も、行進をながめたものの感銘も、それからのちの生活感情のなかで美しく消化されてゆくはずの後味が、心理的にふっきれないものをのこしたとすれば、それはむしろ益より害があったという・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・五つをかしらに三人の子供たちをそのぐるりにあつめながら、バラの花簪などを髪にさした母のうたった唱歌は「青葉しげれる桜井の」だの「ウラルの彼方風あれて」だのであった。当時、父は洋行中の留守の家で、若かった母は情熱的な声でそれらの唱歌を高くうた・・・ 宮本百合子 「きのうときょう」
・・・大分臼杵という町は、昔大友宗麟の城下で、切支丹渡来時代、セミナリオなどあったという古い処だが、そこに、野上彌生子さんの生家が在る。臼杵川の中州に、別荘があって、今度御好意でそこに御厄介になったが、その別荘が茶室ごのみでなかなかよかった。臼杵・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・その声よりも稚い国民学校の子供たち、絵本のほしい子供たち、その子たちはアメリカの子供がたべても美味しいミカン、という奇妙な唱歌をうたって、アメリカから送られたきれいな本を三越の展覧会でごらんなさい、と教えられている。国民学校や中等学校は教科・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・ ヤスの生家は×県の富農で、本気なところのある娘だがこういう場合になると、何と云っても真のがんばりはきかない。階級性というものはこういう時こういう具体的な形で現れて来る。ヤスについて自分は兼々そう思っていたことだし、同時に、僅か二ヵ月暮・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・併合して教えるとするにしても、いちどきに百人から百五十人を入れる唱歌教室をどの小学校でも持っているというわけではあるまい。倍の労力に対する先生への報酬は、どのように変化するのだろうか。 国民学校へ移ってゆく現実の過程には、あらゆる面で、・・・ 宮本百合子 「国民学校への過程」
・・・ 女として自分のうちに開花させられた世界にひたったスーザンのある期間の生活は、クリスマスに久しぶりで田舎の生家へかえったとき非常に微妙な機会をえて一つの展開を見ることとなった。彼女の奏するピアノをきいて、スーの父親である老教授は、かすか・・・ 宮本百合子 「『この心の誇り』」
・・・ 女性が女性として語ろうとしている本が消化されるのは、女性が置かれている新しい社会的な境遇について、自分たちにあるあれこれの問題について知りたい、自分たちの生活に問題があることを肯定してリアルに語る言葉にふれてみたいという願望からである・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
出典:青空文庫