・・・その後にまた麻布の伊藤泰丸氏から手紙をよこされて、前記原氏のほかに後藤道雄、青地正皓、相原千里等の各医学博士の鍼灸に関する研究のある事を示教され、なお中川清三著「お灸の常識」という書物を寄贈された、ここに追記して大泉氏ならびに伊藤氏に感謝の・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・この新旧二つの例はいずれも颱風として今度のいわゆる室戸颱風に比べてそれほどひどくひけをとるものとは思われないようである。明治から貞観まで約千年の間にこの程度の颱風がおよそ何回くらい日本の中央部近くを襲ったかと思って考えてみると、仮りに五十年・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・火山のすそ野でも、土地が灰砂でおおわれているか、熔岩を露出しているかによってまた噴出年代の新旧によってもおのずからフロラの分化を見せているようである。 近ごろ中井博士の「東亜植物」を見ていろいろ興味を感じたことの中でも特におもしろいと思・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ 七 高等学校の一年から二年に進級した夏休みに初めて俳句というものに食いついて、夢中になって「新俳句」を読みふけった。天地万象がそれまでとはまるでちがった姿と意味をもって眼前に広がるような気がした。 蒸し暑い夕風・・・ 寺田寅彦 「俳諧瑣談」
・・・如何となれば新旧共に根拠なければなり。斯る無根の空論を土台にして、女は陰性なり、陰は夜にして暗し、故に女子は愚なりと明言して憚らず。我輩は気の毒ながら失敬ながら記者を評して陰陽迷信の愚論者なりと言わんと欲する者なり。既に立論の根本を誤るとき・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・例えば家の相続男子に嫁を貰うか、又は娘に相続の養子する場合にも、新旧両夫婦は一家に同居せずして、其一組は近隣なり又は屋敷中の別戸なり、又或は家計の許さゞることあらば同一の家屋中にても一切の世帯を別々にして、詰る所は新旧両夫婦相触るゝの点を少・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・これらの弊害は事物の新旧交代の際に多少免るべからざるものとしてこれを忍ぶも、ここに忍ぶべからざるは、その弊害の極度に至り、今の婦人が男子の挙動に傚わんとして、今の日本男子の品行を学ぶが如きあらばこれを如何すべきや。日本国人の品行美ならずとい・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・そして、「明治以前ノ著訳出版ニ係ルノ書名及ビ海外新旧出版ノ書名ヲ輯ス」とある。 震災後の帝国図書館は知らないが、それ以前でも、上野の図書館は決して愉快なところでもなければ、図書館として充分利用出来る便利な処でもなかった。 索引や蔵書・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・なぜかと言うと、閭は台州の主簿になっていたと言い伝えられているのに、新旧の唐書に伝が見えない。主簿といえば、刺史とか太守とかいうと同じ官である。支那全国が道に分れ、道が州または郡に分れ、それが県に分れ、県の下に郷があり郷の下に里がある。州に・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
出典:青空文庫