・・・の説明は皮相な政界内幕の域を脱し得ていないこと、従って、当時のレイノーにその社会的な矛盾紛糾を解く方策が見出せなかった瞬間にはモーロアも一箇の派手な話の運搬人としての存在でしかあり得なかったのだという真相が十分それらの評者に把握されていない・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・左翼の人は、日本とソビエットとを問わず、この合理的解釈を持っていますから、時とすると、真相を理解することが出来ないのだろうと思います。」 松本という予審判事は男の打ちとけた態度に好感をもったと書かれているが、読者は困惑と不快との感情にの・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・経済上の知識ということも福沢諭吉の論じている範囲では、あまりに婦人が深窓に育ち世事にうとく、次第に複雑化して来る近代社会の経済関係の中で、常に騙され損失を蒙る可哀そうな立場にあることを見て、婦人もやはり社会の経済に関する理解を持たなければ、・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・ しかし自分の経験をほんとうに理解しようとする人が知っているように、経験の真相をつかむということはきわめてむずかしい深い問題である。それはただ意識の表面に現われるものをたどって行っただけではわからない。ことに「性慾の強い力」とか「生への・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・あるいはほとんど無意識に自分の感じた事の真相から眼をそむける人もある。これらの事実は表現の虚偽をひき起こさないではやまない。 表現を迫る内生はそれにピッタリと合う表現方法を持っている。この関係を最も適切に言い現わすため、私はかつて創作の・・・ 和辻哲郎 「創作の心理について」
出典:青空文庫