・・・新女大学終左の一篇の記事は、女大学評論並に新女大学を時事新報に掲載中、福沢先生の親しく物語られたる次第を、本年四月十四日の新報に記したるものなり。本著発表の由縁を知るに足るべきを以て茲に附記することゝせり。 ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・されば今、我が日本人の皇学・漢学など唱え、古風を慕い新法を悦ばず、世界の人情世体に通ぜずして、自から貧愚に陥るこそ、外国人の得意ならずや。彼の策中に籠絡せらるる者というべし。 この時にあたって外人のはばかるものは、ひとり西洋学のみ。ひろ・・・ 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・ 去年この紀行が『二六新報』に出た時は炎天の候であって、余は病牀にあって病気と暑さとの夾み撃ちに遇うてただ煩悶を極めて居る時であったが、毎日この紀行を読む事は楽しみの一つであった。あるいは山を踰え谿に沿いあるいは吹き通しの涼しき酒亭に御・・・ 正岡子規 「徒歩旅行を読む」
・・・「ええ新報に出て居りました。サンムトリというのはあれですか。」 二番目にえらい判事が向うの青く光る三角な山を指しました。「うん。そうさ。僕の計算によると、どうしても近いうちに噴き出さないといかんのだがな。何せ、サンムトリの底の瓦・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・未開な、暗い頭脳が一むきに、ぜすきりしとを信奉し、まことに神の羊のように一致団結して苦難に堪えて来た力は、驚くべきだ。公平な立場から書かれた歴史を読むと、私共はシャヴィエル、ワリニヤニ等初期の師父――伴天連達が、神の福音をつげるに勇ましかっ・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
・・・きょうは米子に往かんと、かねて心がまえしたりしが、偶々信濃新報を見しに、処々の水害にかえり路の安からぬこと、かずかず書きしるしたれば、最早京に還るべき期も迫りたるに、ここに停まること久しきにすぎて、思いかけず期に遅るることなどあらんも計られ・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫