・・・ 希臘神話的なそして又その中の人物の感情をさっぱりと単純にしたものを入れていいんです。 多くの婦人は一人前になってからは大部分せわしい、現実の不愛嬌な顔ばかりを見て暮さなければならない様に生れついて居ます。 せわしい中にも苦しい・・・ 宮本百合子 「現今の少女小説について」
・・・ だが、そもそも私たち人間がギリシアの時代からもちつたえ展開させ、神話よりついに科学として確立させたこの社会についての学問、社会科学とその究明よりもたらされる将来の構成への展望とは、人間情熱のどういう面とかかわりあったことなのであろうか・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ ギリシャ神話の中にプロメシュースの神話というのがあります。これは、火の起源の話ですが、プロメシュースという若者が人間の生活に火が必要だと考え、天上の神様の火を盗んでまいりました。人間が火を得たということは人間の社会の発達のために、大き・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・ギリシア神話にある「金毛羊」の物語にしろ、メーテルリンクの「青い鳥」をもとめて旅立ったチルチル、ミチルの物語にしろ、求めるものは幸福であるという人間性を象徴した物語ではないか。だもの、きょうの私たちの心から、どうして「青い鳥」の幻が消えてい・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・は『改造』の「神話」よりずっとテーマとして高い複雑な人間交渉のモメントが捉えられているのだが、ここでも作者は息子の荘太郎は従において、代官神川平助を中心においている。神川平助の性格でもあるのだが、年齢が語る幾歳月の生活感情の習慣が、代官神川・・・ 宮本百合子 「作品の主人公と心理の翳」
・・・彼は社会を求めないで、世界親和を求める。 自我人より全人。兄弟愛 和解 「悪霊」を読んでみたい。 Dのリアリズム 自然主義とのちがい○顕微鏡の力と予言者の視力とをかね備えた 彼の幻想家的な知・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・しく子爵の所へ知らせてよこしたが、その中にはイタリア復興時代だとか、宗教革新の起原だとか云うような、歴史その物の講義と、史的研究の原理と云うような、抽象的な史学の講義とがあるかと思うと、民族心理学やら神話成立やらがある。プラグマチスムスの哲・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・この北国神話の中の神のような人物は、宇宙の問題に思を潜めている。それでも稀には、あの荊の輪飾の下の扁額に目を注ぐことがあるだろう。そしてあの世棄人も、遠い、微かな夢のように、人世とか、喜怒哀楽とか、得喪利害とか云うものを思い浮べるだろう。し・・・ 著:ランドハンス 訳:森鴎外 「冬の王」
・・・その中には寺社の縁起物語の類が多く、題材は日本の神話伝説、仏典の説話、民間説話など多方面で、その構想力も実に奔放自在である。それらは、そういう寺社を教養の中心としていた民衆の心情を、最も直接に反映したものとして取り扱ってよいであろう。民俗学・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・しかし皇室の権威はただ現実的な根拠からのみ出るのではない。神話時代には天皇は、宇宙の主宰者たる天照大神の代表者であった。天照大神は信仰の対象であって現実的に経験のできるものでない。それは理論的に言えば一切のものの根源たる一つの理念である。こ・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫