・・・しかしまた一面においては常設館の常顧客であるところの大衆の期待に応ずるような手ごろの材料をかなりに盛りだくさんにあんばいすることに骨を折ったようである。たとえばド・ヴァレーズ伯爵がけしからぬ犯行の現場から下着のままで街頭に飛び出し、おりから・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・今回地震の起因のごときも、これを前記の定説や仮説に照らして考究するは無用の業ではない。これによって少なくも有益な暗示を得、また将来研究すべき事項に想い到るべき手懸りを得るのではあるまいか。 地震だけを調べるのでは、地震の本体は分りそうも・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・熱心な研究のおかげで颱風の構造に関する知識、例えば颱風圏内における気圧、気温、風速、降雨等の空間的時間的分布等についてはなかなか詳しく調べ上げられているのであるが、肝心の颱風の成因についてはまだ何らの定説がないくらいであるから、出来上がった・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・これはただ経済的の理由だけで、金にもっと余裕がつけば直ぐにでも作り出すだろう。常設館の大きいところでは、ソユーズ・キノの技術部のものが、カメラを持って来て、休みの時間に一般の機械に関する質問に答え、機械を解剖して見せていた。 ソヴェトの・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの「労働者クラブ」」
・・・文学史上の一つの定説となっているバルザックの情熱の追求、――悪徳も亦情熱の権化として偉大なものたり得る――ことを描いたのも、人間と人間との間のエネルギーの最大の集中の形として、関係の中におかれたのであった。 そのように、バルザックは飽く・・・ 宮本百合子 「バルザックについてのノート」
出典:青空文庫