・・・中学校の内、英学女工場と唱るものあり。英国の教師夫婦を雇い、夫は男子を集めて英語を授け、婦人は児女をあずかりて、英語の外にかねてまた縫針の芸を教えり。外国の婦人は一人なれども、府下の婦人にて字を知り女工に長ずる者七、八名ありて、その教授を助・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・市内のある工廠で一挙に数百人の女工を求めて来たので、市の紹介所は、小紡績工場の操短で帰休している娘たちを八王子辺から集めて、やっとその需要にこたえた状態である。 さらに他方には、東京の巣鴨にある十文字こと子女史が経営している十文字高等女・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ 永い間徐行し、シグナルの赤や緑の色が見える構内で一度とまり、そろそろ列車はウラジヴォストクのプラットフォームへ入った。空の荷物運搬車が凍ったコンクリートの上にある。二人か三人の駅員が、眠げにカンテラをふって歩いて来た。 ――誰も出・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・「煉瓦女工」が出版された当時、商業出版の上で若い作者が不安定な利用にさらされていた当時、わたしは「若い女性の著書二つ」のなかで、彼女のおかれている客観的主観的な困難にふれたのであった。その時分「煉瓦女工」の作者は、わたしの書いたその文章・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・紡績工場の生活がその労働や懲罰の方法、寄宿舎生活の内容において、どんなに非人道なものであったかということは、「日本の紡績女工のひどさは実に言語道断です」と、明治四十年代に、桑田熊蔵工学博士が議会でアッピールして満場水をうったようになった、と・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・『女工と農婦』という女のための雑誌がレーニングラードで出ていて、そこの編輯所を訪問したら、主任の女のひとが自分のテーブルの抽斗から、一束の黄色や白のバラバラの型の紙束に鉛筆で何か書いてあるものを見せてくれた。そして、「これが今、この雑誌で呼・・・ 宮本百合子 「打あけ話」
・・・日本の工場学校と云えば体のいい徒弟養成所か、さもなければ製糸所の女工さんなどをプロレタリアの女として目ざまさない為に、いろんなブルジョアくさい女学校の型ばかりの真似をして、役にも立たない作文だの、活花だの、作法だので労働の中から自ずと湧く階・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・二百六十四名、主に少女工剣劇ファン○職工と女工と別の出入口をもっているところもある。○壁のわきのゴミ箱。○脱衣室のわきの三尺の大窓。○あき地で塀なし。わきから通って、となりの工場へ行ける?○三井品川工場 塩原文作。資・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・手拭を姉さんかぶりにした若い農婦が、マンノーをとって争議に参加するばかりでない。女工さんの自主的なストライキが勇敢に闘われるばかりではない。今や、プロレタリアート・農民の婦人は出産の床の中に、八百屋で買う一本の葱の中にまで、自身の熱い階級闘・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
あるまじめな女のひとが次のような話をした。「私は十三四からずっと印刷工場の女工をやったんですが、女工といっても職場で気持がちがいますよ。私たちは、拾うものを片端から自分の生活に関係なく読むもんだから文化的な水準は一等高いけ・・・ 宮本百合子 「個性というもの」
出典:青空文庫