・・・即ち、チャーリーの本当の気分は恐慌によって弱くなっているのだが、宣伝のためには有利だと、まるで第二インターナショナルの職業的社会主義者のように、切迫した恐慌による階級と階級との対立を人為的にみている。三十年間にうけた抑圧との闘いによってプロ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・の重大な責任は、社会的労働において既に産別に組織されているこういうコムソモール、労農通信員の創造力を正しく芸術活動へ導くことにある。人為的な作家の産業別わりあては、或る種のオッチョコチョイな作家が工場から工場へと鉛筆をもって飛びまわるという・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・所謂文学的な辞句の努力や文学的感情と云われているものやへの人為的な屈折なしに、すっきりとした高い人間らしい美を示している。科学者の文筆活動の示し得る望ましい美は、こういう統一の姿においてではなかろうか。今日の科学の可能と明日の科学のために未・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ヨーロッパの自然は、ギリシャ時代、ルネッサンスにあってはアポロだのジュピターだのという伝説の神々の仮名で重々しく擬人化され、美化され、中世紀は、たとえそれは栄光的であるとしても全く人為的な、神学の造化物として描かれた。あのように科学的天稟ゆ・・・ 宮本百合子 「自然描写における社会性について」
・・・作者が従来生きてきた社会層の枠の内での常識が裏がえしの形で出された、人為的なものではないかとあやぶまれるのである。 この作者の才能を認める川端康成その他多くの作家たちは、石坂の作品にある誇張癖、古めかしさなどを、一概に咎めだてすることは・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・躍進日本という愛唱される標語の実質は、極めて極めて現実的な道によって獲得されつつある一方、何ゆえ文化形態の外貌においては抽象的な、気分的なロマンチシズムが人為的に高揚されなければならないか。そこの矛盾の理由が知りたいのである。 ・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・自身、人間の生活に何かのよろこびをもたらさずにはいられない栄さんが、世間も文学もあの息苦しさと人為的な形にしいられるなかで、こらえ切れなくなった息を一つ深く深く吸いこみ、さて、と立って襷をかけ、動き出したのが、「暦」そのほかこの集にもおさめ・・・ 宮本百合子 「壺井栄作品集『暦』解説」
・・・だが、今日国文学が文学研究の態度から見れば全く不健全な人為的隆盛めいた状態におかれ得る事情に、日本の諸文学研究の伝統中、従来国文学が最も弱い環の一つであったこと、そして、そこに向って今日文学外の力がかかって来ていることは特別な注目に価するこ・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・では主人公クライドにとってのりこえられなかった貧富の堰ものりこえる代りに、人間としての生活の自主を全く喪って、英雄業者として四六時ちゅう行動を掣肘され支配され、ハリウッドのスタアのような人為的雰囲気で生存しなければならない悲惨を、バート・ホ・・・ 宮本百合子 「文学の大陸的性格について」
・・・志賀直哉氏の人為及び芸術の魔法の輪を破るには、志賀氏の芸術の一見不抜なリアリティーが、広い風波たかき今日の日本の現実の関係の中で、実際はどういう居り場処を占めているものであるか、何の上にあって、しかくあり得ているかを看破しなければならないの・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫