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・・・公園の入口にはウインネッケ彗星大歓迎会 音楽と映画の夕べと云う立て札が出て居る。 円たく、パッカード、セダンの硝子扉の中に白粉をつけた娘の頸足が見える。赤い毛糸帽が自転車でとぶ。 荷馬車が二台ヨードをとる海藻をのせて横切る。 男・・・
宮本百合子
「一九二七年春より」
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・・・日本文学の歴史において一つの画期を示したこの自我の転落は、当事者たちの主観から、未来を語る率直悲痛な堕落としては示されず、何か世紀の偉観の彗星ででもあるかのような粉飾と擬装の下に提示され、そこから、文学的随筆的批評というようなものも生じた次・・・
宮本百合子
「文学精神と批判精神」