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・・・と荷風の「春水流の低徊趣味」が「主要な装飾要素になっている」文学精神の前に跪拝している。自分のその文章などは「末世の僧の祖師を売る者、妄言当死」と迄頭を垂れている。もしそのような芸術至上の帰依に満ちた芸心があるならば、佐藤氏も「モスクワ」が・・・
宮本百合子
「文芸時評」
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・・・かと思う暇もなく、停ると同時に早や次の運動が波立ち上り巻き返す――これは鵜飼の舟が矢のように下ってくる篝火の下で、演じられた光景を見たときも感じたことだが、一人のものが十二羽の鵜の首を縛った綱を握り、水流の波紋と闘いつつ、それぞれに競い合う・・・
横光利一
「鵜飼」