・・・心あるイギリス人は、この富と貧との新しい社会悲惨の図絵に無関心でいられず、ひろがる犯罪、流行病から自分の家族を安全にあらせようと願えば勢い都市の衛生、都市の施設というものを議会の問題とせずにはいられなかった。文学の世界で、写実主義がおこって・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・間小説の題材とテーマが性に最大の重点をおき、その点にばかり拡大鏡をあてて人間関係を見た状態を、この童画の心理にひきくらべて考えると、その気狂いじみた性への執念はむしろおろかしく、物狂わしい非人間生活の図絵としかみえない。社会が未開であったと・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・そしてそのことによって進歩的読者に社会主義の具体的図絵を与え、党の意義を普及しつつある作家をその事実にたって公正に評価することが他の党員作家にとって有害であるということは理解しにくいことです。文学における政治の優位ということは文学運動と作家・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・というある意味での現代図絵に、そういう面白さも加味しようと意識されたのであれば、やはりその面白さの試みは、作品の真のテーマと游離した結果になっている。この小説で作者の語ろうとするテーマは、朝田医院主及びそれをとりまく一群の現代的腐敗、堕落を・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫