・・・其権利を獲得した事に依って、政界に新鮮が与えられ、よりよき暗示を施政者に与え得るが故に、要求されなければならないものではございますまいか。 女性の自覚は、男性の所有すると同様のものを所有しようとする――一面から申せば何の改造も加えられな・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・そんな風な経済記事が扱われ、政治にしろ、そのときの大臣連の出世物語、政界内幕話という工合であった。戦争がはじまったとき、すべての浪花節、すべての映画、すべての流行唄、いわゆる大衆娯楽の全部が戦争宣伝に動員された。大衆文学・大衆小説はその先頭・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・この事件も、下山氏の死にからんで強行されようとした何かの政界の失敗であり、この失敗そのものが、逆に下山氏の死の微妙ないきさつについて、暗示するところもあるかのようである。 七月十二日の新聞をみると国鉄は十三日から第二次整理六万五千人を行・・・ 宮本百合子 「「推理小説」」
・・・ 昭電事件その他の、世界的な規模をもった政界腐敗の事実を知った私どもは、元大臣、各官庁の高官、その人々の道義の頽廃を痛感するとともに、その人々の妻の道義感がどんなに麻痺していたかということについておどろく。収賄の内容が味噌、醤油から洋服・・・ 宮本百合子 「妻の道義」
・・・この本は政界裏のぞき的なサロンゴシップで真にフランスの悲劇と人民の反ファシズム闘争を反映したものではなかった。一九四五年一月三十日東京に本式の空襲がはじまった。それから〔五〕月まで私の住んでいた本郷区の各所が連続的に破壊・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・丁度政界が動揺していた最中なので、余程誇大されているのではあるまいかとは、誰でも思うことだ。私は、「少し大袈裟ではないこと? 何だか、何処まで本当にして好いかわからないようだけれども」と云った。それは皆同意見であった。少し号外の調子・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・特によくしゃべったのは赤木桁平で、当時の政界の内幕話などを甲高い調子で弁じ立てた。どこから仕入れて来たのか、私たちの知らないことが多かった。が、ほかの人たちが話題にするのは、当時の文芸の作品とか美術とか学問上の著作とかの評判であった。漱石は・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫