・・・かれは労して功なく精根を尽くしてしまった。かれの衰え行く様は明らかに見える。 今や諧謔の徒は周囲の人を喜ばすためにかれをして『糸くず』の物語をやってもらうようになった、ちょうど戦場に出た兵士に戦争談を所望すると同じ格で。あわれかれの心は・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
・・・それぞれの人はそれぞれの立場においてその精根をつくさねばならぬ。そうして彼が最もよくその自己であり得た時に、彼らは最もよく一つになり得るのである。 吉田文五郎氏の話した若いころの苦心談はこの事を指示していたように思われる。足を使っていた・・・ 和辻哲郎 「文楽座の人形芝居」
出典:青空文庫