・・・わり込んで腰をおろした女の人たちの二人は、守衛さんが云々とそれを楯に動こうとせず、先着の一人が化粧の顔に怒気を浮べて、わたしはひとの席までとっては、よう座りませんからと啖呵を切るようにしたら、守衛も、ここのところは先着の人に坐らして下さいと・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・ その場合、散文の方が短歌よりも判断の具体的なよりどころを示しております。短歌はむずかしいことだろうとも考えられます。しかし賞金のことは、どうか皆様、お話し合いの上心ある御処置を期待いたします。一、もし文集として編集される見とおしが・・・ 宮本百合子 「「未亡人の手記」選後評」
・・・ この間、プロレタリア作家の徳永直と、これはプロレタリア短歌を専門とする渡辺順三とが、東北飢饉地方を見学に行った。私は断片的にではあるがいろいろ感銘のふかい話を聞いたが、その中で特に心に銘じたことが一つあった。それはあちらに行って実際に・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・と、押入った先で啖呵を切ったことが書いてあった。この言葉は短い。けれども、一個の人間として深い絶望のこころを示している。 前線から帰った人から、最後まで残ったのは兵士であって、指揮官は飛行機で疾うの昔に引揚げてしまっていたという話を、戦・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫