・・・ドック近くの裏町の門々にたたずむ無気味な浮浪人らの前をいばって通り抜けて川岸へくると護岸に突っ立ったシルクハットのだぶだぶルンペンが下手な掛け図を棒でたたきながら Die Moriat von Mackie Messer を歌っている。伴奏・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 雪を振り落してから、一本腕はぼろぼろになった上着と、だぶだぶして体に合わない胴着との控鈕をはずした。その下には襦袢の代りに、よごれたトリコオのジャケツを着込んでいる。控鈕をはずしてから、一本腕は今一本の腕を露した。この男は自分の目的を・・・ 著:ブウテフレデリック 訳:森鴎外 「橋の下」
・・・ びっくりして振りむいてみますと、赤いトルコ帽をかぶり、鼠いろのへんなだぶだぶの着ものを着て、靴をはいた無暗にせいの高い眼のするどい画かきが、ぷんぷん怒って立っていました。「何というざまをしてあるくんだ。まるで這うようなあんばいだ。・・・ 宮沢賢治 「かしわばやしの夜」
・・・変てこなねずみいろのだぶだぶの上着を着て、白い半ずぼんをはいて、それに赤い革の半靴をはいていたのです。 それに顔といったらまるで熟したりんごのよう、ことに目はまん丸でまっくろなのでした。いっこう言葉が通じないようなので一郎も全く困ってし・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・小麦を粉にする日ならペムペルはちぢれた髪からみじかい浅黄のチョッキから木綿のだぶだぶずぼんまで粉ですっかり白くなりながら赤いガラスの水車場でことことやっているだろう。ネリはその粉を四百グレンぐらいずつ木綿の袋につめ込んだりつかれてぼんやり戸・・・ 宮沢賢治 「黄いろのトマト」
・・・ 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴をぬいで上りますと、突き当りの大きな扉をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・ それは、髪を長くして、だぶだぶのずぼんをはいたあばたな男が、小屋の幕の前に立って、「さあ、みんな、入れ入れ」と大威張りでどなっているのでした。亮二が思わず看板の近くまで行きましたら、いきなりその男が、「おい、あんこ、早ぐ入れ。銭は・・・ 宮沢賢治 「祭の晩」
・・・三尺をとっぽさきに結んだ小さい腰がだぶだぶの靴を引ずる努力で動く拍子に、歌い出した鼻唄が、私の耳に入って来る。 私は、思わず微笑する。「小僧さん。ただ見たばかりじゃあ勿論詰らないさ。一寸、あの青珠の下った、雲の天蓋のような色をしたス・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・それがソヴェト同盟の大きい男の作業服を着たのだから、手先はだぶだぶだし、靴はぶかぶかだし、子供の化物のような恰好なのだ。「工合がわるくないですか?」 ドミトロフ君は心配気だ。「平気です。出かけましょうか」「配燈室」へ入って行・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・を足の先に集めて居るとフイに耳元で、「やや子の様な事してなさるて事よ。と云う声に驚いて見ると、甚五郎爺が大きな雪かきを肩にかついで、長靴を履いた上にわらぐつを履いて「もんぺ」をだぶだぶにつけて立って居る。見ると、家の持地の入・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫