・・・花田 そうつけつけやり込めるもんじゃないよ、女ってものは。沢本 俺はもうだめだ。俺はある女を恋していた。そうして飢えが逼ってきた。ああ俺は死んだほうがいい。俺は天才画家として画筆を握ったまま死にたいよ。とも子 花田さん、私、・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・ つけつけと小言を言わるれば口答えをするものの、省作も母の苦心を知らないほど愚かではない。省作が気ままをすれば、それだけ母は家のものたちの手前をかねて心配するのである。慈愛のこもった母の小言には、省作もずるをきめていられない。「仕事・・・ 伊藤左千夫 「隣の嫁」
・・・ あんなに、常々つけつけ云うお金はんやさかい、どんな事云われとるか知れんさかい。 な、私で話が分るんなら行んでも来ようが、こう云う事は、女子ではらちが明かんさかいな。 病気になった時、親にはなれて居るほど心細いものはあらへん。・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ いつもになく千世子は自分の留守に罪もない鳩に女中がつけつけあたりゃあしまいかなんかと云う事がやたらに気になって居た。 あとをくっついてどこまでも来るといいんだけど。 こんな事も思って居た。 その日は床に入るまで千世・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・ 自分の父親は、女年寄の前に頭を下げてたのんで居ると相手は、つけつけと取り合わない様にして居るのを見たら、訳もなく、女は己より目下なもの、弱いものと云う感じを持って居る子供等は、どんなににくらしい気持になるだろう。私は菊太の男の子に十三・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫