・・・日本のラジオはこの少数委員会のもつ非常に大きな権限と電波庁との統制をうけることになる。一般の人々が政府案をラジオの官僚統制案とみていることはさけがたい必然である。政府案第十二条は、この五人の委員が「任命後最高裁判所長の面前に於て正規の宣誓書・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ また文化はある国からある国へ、伝播されて発達するものであるという説をとなえる人がある。そういう人たちはイタリーにファッシストができたから、それが拡がってドイツのナチスになり、ドイツのナチスはイギリスに拡がるばかりか東洋の国々にもやがて・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・特定の波長に対しては特定の検波器がある。電波に関するこの中学生的常識は、文学における原作者と翻訳者との関係にも極めて自然に適用される。すなわち、私はこれだけのことを云いたい。私は訳者を識っている。平常着のままでよろこんだり、むずかったり、癇・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・てやったが、失業と夫婦生活の破壊との生々しい関係、失業と売笑との直接な関係、大多数者の慰安ない生活と低劣なままに繋ぎとめられている文化水準とアルコール中毒との具体的関係、ましてや戦争の後帰還兵によって伝播される花柳病の恐るべき問題などについ・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・最悪よりはより尠き悪を、大衆による広汎な悪徳の伝播よりは、まだしもブルジョアの今のままでの悪行を! そして、自分が無一文になるよりは腹立たしいが今あるものを手離さず! そういうのがバルザックの考えかたの道筋なのであった。 私達はここで一・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・に書かれているブルジョア婦人雑誌に対する態度は、プロレタリア文化の尖鋭な伝播者・組織者としてのわれわれの刊行物と、ブルジョア文化攻勢の具体化としての婦人雑誌との相互的関係を、十分弁証法的に、レーニン主義的に把握しているとはいえぬ。「発刊の言・・・ 宮本百合子 「婦人雑誌の問題」
・・・その上、日本の今日の技術では、全波に切り替えて行くスウィッチの製作が未熟であって、とても自由に地球をめぐる電波は捕えかねるらしい。固定させて、それぞれの聴取目的の波長にやや合わせて、幾つかをきめて切り替えて行くスウィッチならば、相当の性能を・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
・・・今日私たちの住む地球の上は毎秒三〇万粁の速度で、昼夜を分たず世界各国語による交通が電波によって飛び交っているのであるが、最も興味あるべきこの世界ニュースの聴取が日本では極めて狭い範囲に止められているのはどういう理由からであろう。日本の民間の・・・ 宮本百合子 「「ラジオ黄金時代」の底潮」
・・・ 竜池は我名の此の如くに伝播せらるるを忌まなかった。啻にそれのみではない。竜池は自ら津国名所と題する小冊子を著して印刷せしめ、これを知友に頒った。これは自分の遊の取巻供を名所に見立てたもので、北渓の画が挿んであった。 文政五年に竜池・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・そのうち噂は清武一郷に伝播して、誰一人怪訝せぬものはなかった。これは喜びや嫉みの交じらぬただの怪訝であった。 婚礼は長倉夫婦の媒妁で、まだ桃の花の散らぬうちに済んだ。そしてこれまでただ美しいとばかり言われて、人形同様に思われていたお佐代・・・ 森鴎外 「安井夫人」
出典:青空文庫