九月一日、土曜 私共は、福井に八月一日より居、その日、自分は二階、Aは階下で勉強中。十二時一二分すぎ、ひどい上下動があった。自分はおどろき立ち上ったが二階を降るのが不安なほど故、やや鎮るのを待って降りる。あまり日でりが・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 土曜日は、一週間の買い入れ日です。あちらでは、日曜日は一般に全くの休日で、八百屋から肉屋、文房具屋まで店を閉じてしまいます。それ故、日曜日、次の月曜に入用なものは勿論、買いものは出来る丈この日に纏め、下町の、それぞれで名を売っているよ・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 毎週土曜に町まで通って、活花を習って居るのが流石はとうなずかせる。そんな時、主人は学校からかえって来て、南金錠を自分であけて雨戸を引きあけ細君の置いて行った膳に向って長い事かかって昼飯をするのである。 毛むくじゃって云っても、ああ・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・ 毎土曜の午後、多喜子は洋裁の稽古をしているのであった。「狸穴からだから、途中にかかるのよ」「きょう、お宅は? やっぱりおそいの?」「夕飯まで図書館へまわって来るんですって。この頃あのひと一生懸命だわ、呼ばれないうちにせめて・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
・・・国立出版所の机の前で働くかと思うと、「土曜労働」でジャガ薯掘りをやりながら、フォルシュは四度キエフ市の政権が代るのを見た。反革命の白軍が南方ロシアの旧い美しい都市であるキエフを占領する。赤軍が逆襲して、市ソヴェトに赤旗が翻ったかと思うと、チ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ 悪態、罵声、悪意が渦巻き、子供までその憎悪の中に生きた分け前を受ける苦しい毎日なのであるが、その裡で更にゴーリキイを立腹させたのは、土曜日毎に行われる祖父の子供等に対する仕置であった。鋭い緑色の目をした祖父は一つの行事として男の子達を・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・―― 或土曜日。天気のよい日であった。Aが出がけに、一時頃、須田町で会って銀座を歩こうと云って行った。その積りで起きて見ると、卓子の上に、学習院の門衛からの葉書がのって居る。 青山北町四丁目に一軒ある。見たらどうかと云うのである。・・・ 宮本百合子 「又、家」
・・・あらゆる悪態、罵声、悪意が渦巻くような苦しい毎日なのであるが、その裡でゴーリキイを更に立腹させたのは、土曜日毎に行われる祖父の子供らに対する仕置であった。祖父は一つの行事として男の子供らを裸にし、台所のベンチへうつ伏せに臥かせ、樺の鞭でその・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・ ポチが潜るのも面倒がる程、土用の間に裏の夏草は高くなった。コスモスの葉も見える。あの根方の茂みには蛇も昼寝するであろう。 蓬々とした青草の面に、乾いた、何処やら白いような光線が反射し始めた。七月に吹いていたのとは違った風回りで、風・・・ 宮本百合子 「蓮花図」
・・・などという声が聞えた。土曜から日曜にかけては、男の児が遊びに来た。尺八を吹く男の人も来たし、犬も来る。賑やかなのは一時で、然しじきもとの独り住みの静けさに戻る。ダリアの盛りの頃、私共はその若い女の人から一束の美しい花を貰った。夜にでもな・・・ 宮本百合子 「蓮花図」
出典:青空文庫