・・・ 先生の作った「日本におけるドン・ジュアンの孫」という長詩も慥か聞かされたように思う。けれどもそのうちの或行にアラス、アラック、という感投詞が二つ続いていたと記憶するだけで、あとはまるで忘れてしまった。 ベインの『論理学』を読めとい・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・今まで知れた因果以外にいくらでも因果があり得るものだと承知しているからであります。ドンが鳴ると必ず昼飯だと思う連中とは少々違っています。 ここいらで前段に述べた事を総括しておいて、それから先へ進行しようと思います。吾々は生きたいと云う念・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・ 両足でドンと。―― 彼は、恐しい夢でも見てるような、無気味な気持に囚われながら、追っかけられながら、デッキのボースンの処へ駆けつけた。「駄目だ。ボースン。奴あ死んでるぜ」 彼は監獄から出たての放免囚見たいに、青くなって云った。・・・ 葉山嘉樹 「労働者の居ない船」
・・・果樹整枝法その四、又その一、水平コルドン。はじめっ。一、二、一、二、一、二、一、二、一、やめい。」大将「次はその又二、直立コルドン。これはこのままでよろしい。ただ呼称だけを用うる。一、二、一、二、よろしいか。八番。」兵卒八「直立コル・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・六十万円といったならそのころのフランドンあたりでは、まあ第一流の紳士なのだ。いまだってそうかも知れない。さあ第一流の紳士だもの、豚がすっかり幸福を感じ、あの頭のかげの方の鮫によく似た大きな口を、にやにや曲げてよろこんだのも、けして無理とは云・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
ソヴェト同盟の南にロストフという都会がある。ドン川という大きい河に沿って、花の沢山咲いた綺麗な街が、新しい労働者住宅やクラブの間にとおっている。私は七月のある朝、ドイツからソヴェト同盟へやって来たドイツの労働者見学団といっ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
朝から、おぼつかない日差しがドンヨリ障子にまどろんで居る様な日である。 何でも、彼んでも、灰色に見える様に陰気な、哀れっぽい部屋の中にお君は、たった独りぽっちで寝て居る。 白粉と安油の臭が、・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・anted to stay in her own room this evening, and so I decided to stay in too ! My dearest “Chame”, I don't deserve your l・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・にさえならぬ図々しい屁理屈をこねている日本帝国主義の三百代言松岡洋右の提灯もちなどとともに、大衆を犠牲として恐慌を切りぬけようとする支配階級帝国主義戦争強行のチンドン屋の役を相つとめている。「物価暴騰時代。損をしない心得」この記事をよん・・・ 宮本百合子 「『キング』で得をするのは誰か」
・・・「まるで僕が Don Juan ででもあるようだ。」 戸川は主人のために気の毒に思って、半ば無意識に話を外へ転じようとした。そして持前のしんねりむっつりした様子で、妙な話をし出した。 参 戸川は両手を火鉢・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫