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・・・ ござんす、というところがいく分鼻にかかる訛りを響かせながら、坐っているみんなに挨拶するようにして徳田球一が入って来た。一方の窓を背にして置かれていた小机の前に坐った。「どうも今日はお忙しいところをすみませんでした」 女のひとた・・・
宮本百合子
「風知草」
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・・・須磨子の日向訛りが商人に通ぜぬので、用が弁ぜずにすごすご帰ることが多い。 お佐代さんは形ふりに構わず働いている。それでも「岡の小町」と言われた昔の俤はどこやらにある。このころ黒木孫右衛門というものが仲平に逢いに来た。もと飫肥外浦の漁師で・・・
森鴎外
「安井夫人」