・・・へ牛肉の山椒焼や焼うどんや肝とセロリーのバタ焼などを食べに行くたびに、三度のうち一度ぐらいはぶぶ漬を食べて見ようかとふと思うのは、そのぶぶ漬の味がよいというのではなく、しるこ屋でぶぶ漬を売るということや、文楽芝居のようなお櫃に何となく大阪を・・・ 織田作之助 「大阪発見」
・・・ と妻はぶあいそに答えます。「それは、たいへんだね。やっぱり罹災したのですか。」「はあ。」 妻は、いったいに、無口な女です。「どこで?」「甲府で。」「子供を連れているんでは、やっかいだ。あがりませんか?」 桃・・・ 太宰治 「たずねびと」
・・・馬屋のうしろの方で何かの戸がばたっと倒れ馬はぶるるっと鼻を鳴らしました。 一郎は風が胸の底まで滲み込んだように思ってはあと強く息を吐きました。そして外へかけ出しました。 外はもうよほど明るく土はぬれて居りました。家の前の栗の木の列は・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・するとテねずみはぶるるっとふるえて、目を閉じて、小さく小さくちぢまりましたが、だんだんそろりそろりと延びて、そおっと目をあいて、それから大声で叫びました。「こいつは、ブンレツだぞ。ブンレツ者だ。しばれ、しばれ。」と叫びました。すると相手・・・ 宮沢賢治 「クねずみ」
出典:青空文庫