・・・のだった、 芸術至上主義者であって、そうあり切れなかった彼、強くリアリスティックになれない彼、ロマンティシズム 美を歴史的素材 エキゾティックな世界 奇蹟に見そうとした 「大導寺信輔の半生」これらの作品は凜々とした気魄をたた・・・ 宮本百合子 「「敗北の文学」について」
・・・或る概論の実証とし、また反証としようとする。 平常、自己の結婚生活、恋愛生活に矜持ある希望、信念を持ち得ないでいた者は、わっといってその周囲に馳け集る。おのおの手には帳面を持ち、その行為がよいと批評されれば、人生に於けるあらゆる斯の如き・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・そうだとすれば書記長の発言にあるわたしの非大衆性、非階級性、独善という断定はおのずから反証されているわけです。 わたしが立候補できない一つは上述のような健康上の理由です。議員その他の必要条件の一つは、健康であるということは党員議員の一・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・だのを書いたツルゲーネフが、この作家の奥深い現実への感覚とその文学を理解しなかったのも面白い。半生をパリで暮らしたツルゲーネフには当時のロシアの前進する若い力の表面の動きは外からつかめても、社会の底に湛えられてその支えとなっていたシチェード・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・と呼んで愛するが、ゴーリキイの半生のさまざまな場面は洋々としたヴォルガの広い流れと共に動いている。冬になって河が氷結すると、ゴーリキイは波止場仕事を失って、或るパン焼工場へ入った。 そこは月三ルーブリで十四時間の労働である。体も辛かった・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・作者たちが、そこでめいめいの半生を費しているにもかかわらず、中国の人民というものの理解に絡みつかせているこの自家撞着は、二人の作家が婦人だというような偶然によって説明されつくさないのである。・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
・・・軍関係人的損耗、六六万二〇七九人太平洋戦争開始以来一般空襲被害概況死者 二四一、三〇九名負傷者 三一四、〇四一名家屋全焼全壊 二、三三三、三八八戸家屋半焼半壊 一一〇、九二八戸罹災者・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・実は木村も前半生では盛んに戦ったのである。しかしその頃から役人をしているので、議論をすれば著作が出来なかった。復活してからは、下手ながらに著作をしているので、議論なんぞは出来ないのである。 その日の文芸欄にはこんな事が書いてあった。・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・トルストイは前半生において自然の勝利を、自然的欲望の勝利を歌った人である。しかし後半生においては忠実な神の僕であった。ストリンドベルヒは自然主義の精神を最も明らかに体現した人である。しかし晩年には神と神の正義との熱心な信者であった。デカダン・・・ 和辻哲郎 「『偶像再興』序言」
・・・しかしこの期間の生活の痕跡を一身に受けている純一君は、明らかにその反証を見せてくれたのである。『道草』に書かれた時代よりも後に生まれた純一君は、父親を「気違いじみた癇癪持ち」として心に烙きつけていた。それは容易に消すことができないほど強い印・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫