・・・破壁残軒の下に生を享けてパンを咬み水を飲む身も天ならずや。 馬鹿め、しっかり修行しろ、というのであった。これもまた信じている先生の言葉であったから、心機立ちどころに一転することが出来た。今日といえども想うて当時の事に到るごとに、心自・・・ 泉鏡花 「おばけずきのいわれ少々と処女作」
・・・破壁残軒の下に生を享けてパンを咬み水を飲む身も天ならずや。 馬鹿め、しっかり修行しろ、というのであった。これもまた信じている先生の言葉であったから、心機立ちどころに一転することが出来た。今日といえども想うて当時の事に到るごとに、心自・・・ 泉鏡花 「おばけずきのいわれ少々と処女作」
・・・ 泰西の諸国にて、その公園に群る雀は、パンに馴れて、人の掌にも帽子にも遊ぶと聞く。 何故に、わが背戸の雀は、見馴れない花の色をさえ恐るるのであろう。実に花なればこそ、些とでも変った人間の顔には、渠らは大なる用心をしなければならない。・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・ 泰西の諸国にて、その公園に群る雀は、パンに馴れて、人の掌にも帽子にも遊ぶと聞く。 何故に、わが背戸の雀は、見馴れない花の色をさえ恐るるのであろう。実に花なればこそ、些とでも変った人間の顔には、渠らは大なる用心をしなければならない。・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・ 泰西の諸国にて、その公園に群る雀は、パンに馴れて、人の掌にも帽子にも遊ぶと聞く。 何故に、わが背戸の雀は、見馴れない花の色をさえ恐るるのであろう。実に花なればこそ、些とでも変った人間の顔には、渠らは大なる用心をしなければならない。・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・僕は家族にパンを与えないで、自分ばかりが遊んでいたように思えた。 僕の書斎兼寝室にはいると、書棚に多く立ち並んでいる金文字、銀文字の書冊が、一つ一つにその作者や主人公の姿になって現われて来て、入れ代り、立ち代り、僕を責めたりあざけったり・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・僕は家族にパンを与えないで、自分ばかりが遊んでいたように思えた。 僕の書斎兼寝室にはいると、書棚に多く立ち並んでいる金文字、銀文字の書冊が、一つ一つにその作者や主人公の姿になって現われて来て、入れ代り、立ち代り、僕を責めたりあざけったり・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・僕は家族にパンを与えないで、自分ばかりが遊んでいたように思えた。 僕の書斎兼寝室にはいると、書棚に多く立ち並んでいる金文字、銀文字の書冊が、一つ一つにその作者や主人公の姿になって現われて来て、入れ代り、立ち代り、僕を責めたりあざけったり・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・塩の為め書いたものでないのは明かであるが、此の過去の事実を永遠に文人に強いて文学の労力に対しては相当の報賞を与うるを拒み、文人自らが『我は米塩の為め書かず』というは猶お可なれども、社会が往々『大文学はパンの為めに作られず』と称して文人の待遇・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・塩の為め書いたものでないのは明かであるが、此の過去の事実を永遠に文人に強いて文学の労力に対しては相当の報賞を与うるを拒み、文人自らが『我は米塩の為め書かず』というは猶お可なれども、社会が往々『大文学はパンの為めに作られず』と称して文人の待遇・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
出典:青空文庫