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・・・けれども詩になると彼は僕よりも沢山作って居り平仄も沢山知って居る。僕のは整わんが、彼のは整って居る。漢文は僕の方に自信があったが、詩は彼の方が旨かった。尤も今から見たらまずい詩ではあろうが、先ず其時分の程度で纏ったものを作って居ったらしい。・・・
夏目漱石
「正岡子規」
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・・・玄機が詩を学びたいと言い出した時、両親が快く諾して、隣街の窮措大を家に招いて、平仄や押韻の法を教えさせたのは、他日この子を揺金樹にしようと云う願があったからである。 大中十一年の春であった。魚家の妓数人が度々ある旗亭から呼ばれた。客は宰・・・
森鴎外
「魚玄機」