・・・それは時間中に、砂場で採取してきた砂鉄を紙の上にのせて、磁石で紙の裏を摩擦しながら、砂をぴょんぴょんとおどらせていたのを、先生に見つかったからです。もし、このことを秀ちゃんが、お姉さんに話したら、お姉さんが、家じゅうの人に話して、たいへんだ・・・ 小川未明 「二少年の話」
・・・ずるい弟は、全く蘇生の思いで、その兄の後を、足が地につかぬ感じで、ぴょんぴょん附いて歩いた。 A新聞社の前では、大勢の人が立ちどまり、ちらちら光って走る電光ニュウスの片仮名を一字一字、小さい声をたてて読んでいる。兄も、私も、その人ごみの・・・ 太宰治 「一燈」
・・・赤ん坊でもちょうど蛙か何かのように足をつかまえてぶらさげてぴょんぴょんとはねさせるのである。こういうふうに人間の個性をなくしているところは全く軍隊式である。年じゅうこのとおりだったら梟やたぬきのような種類の人間にはさぞ都合が悪いことであろう・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・それでもこれが通ると、途中の草原につながれて草をはんでいる馬が、びっくりしてぴょんぴょんはねるのである。 旧軽井沢の町はユニークな見ものである。ちょっと見ると維新以前の宿場のような感じのする矮小な低い家並みの店先には、いわゆる「居留地」・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・ ホモイはもううれしくて、息もつかずにぴょんぴょん草の上をかけ出しました。 それからホモイはちょっと立ちどまって、腕を組んでほくほくしながら、 「まるで僕は川の波の上で芸当をしているようだぞ」と言いました。 本当にホモイは、・・・ 宮沢賢治 「貝の火」
・・・嘉助が河原の砂っぱの上で、ぴょんぴょんはねながら高く叫びました。 みんなはとった魚を石で囲んで、小さな生け州をこしらえて、生きかえってももう逃げて行かないようにして、また上流のさいかちの木へのぼりはじめました。 ほんとうに暑くなって・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・すると耳に手をあてて、わああと云いながら片足でぴょんぴょん跳んでいた小さな子供らは、ジョバンニが面白くてかけるのだと思ってわあいと叫びました。まもなくジョバンニは黒い丘の方へ急ぎました。五、天気輪の柱 牧場のうしろはゆるい丘・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・三郎が、河原の砂っぱの上で、ぴょんぴょんはねながら、高く叫んだ。 ぼくらは、とった魚を、石で囲んで、小さな生洲をこしらえて、生き返っても、もう遁げて行かないようにして、また石取りをはじめた。ほんとうに暑くなって、ねむの木もぐったり見えた・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・そこで鹿はみなぴょんぴょん跳びあがりました。「おう、うまい、うまい、そいづさい取ってしめば、あどは何っても怖っかなぐない。」「きっともて、こいづあ大きな蝸牛の旱からびだのだな。」「さあ、いいが、おれ歌うだうはんてみんな廻れ。」・・・ 宮沢賢治 「鹿踊りのはじまり」
・・・そして片脚で、ぴょんぴょん跳ねて、人ごみの中にはいってしまいました。 亮二も急いでそこをはなれました。その辺一ぱいにならんだ屋台の青い苹果や葡萄が、アセチレンのあかりできらきら光っていました。 亮二は、アセチレンの火は青くてきれいだ・・・ 宮沢賢治 「祭の晩」
出典:青空文庫