・・・本来が自己本位であるから、個人の行動が放縦不羈になればなるほど、個人としては自由の悦楽を味い得る満足があると共に、社会の一人としてはいつも不安の眼をみはって他を眺めなければならなくなる、或る時は恐ろしくなる。その結果一部的の反動としては、浪・・・ 夏目漱石 「文芸と道徳」
・・・青年の客気に任せて豪放不羈、何の顧慮する所もなく振舞うた。その結果、半途にして学校を退くようになった。当時思うよう、学問は必ずしも独学にて成し遂げられないことはあるまい、むしろ学校の羈絆を脱して自由に読書するに如くはないと。終日家居して読書・・・ 西田幾多郎 「或教授の退職の辞」
・・・ただ私の場合は、用具や設備に面倒な手間がかかり、かつ日本で入手の困難な阿片の代りに、簡単な注射や服用ですむモルヒネ、コカインの類を多く用いたということだけを附記しておこう。そうした麻酔によるエクスタシイの夢の中で、私の旅行した国々のことにつ・・・ 萩原朔太郎 「猫町」
・・・女は一度嫁して其家を出されては仮令二度富貴なる夫に嫁すとも、女の道に違て大なる辱なり。 男子が養子に行くも女子が嫁入するも其事実は少しも異ならず。養子は養家を我家とし嫁は夫の家を我家とす。当然のことにして、又その家の貧富貴賤、そ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・女は一度嫁して其家を出されては仮令二度富貴なる夫に嫁すとも、女の道に違て大なる辱なり。 男子が養子に行くも女子が嫁入するも其事実は少しも異ならず。養子は養家を我家とし嫁は夫の家を我家とす。当然のことにして、又その家の貧富貴賤、そ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・人事の失望は十に八、九、弟は兄の勝手に外出するを羨み、兄は親爺の勝手に物を買うを羨み、親爺はまた隣翁の富貴自在なるを羨むといえども、この弟が兄の年齢となり、兄が父となり、親爺が隣家の富を得るも、決して自由自在なるに非ず、案に相違の不都合ある・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・人事の失望は十に八、九、弟は兄の勝手に外出するを羨み、兄は親爺の勝手に物を買うを羨み、親爺はまた隣翁の富貴自在なるを羨むといえども、この弟が兄の年齢となり、兄が父となり、親爺が隣家の富を得るも、決して自由自在なるに非ず、案に相違の不都合ある・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・ゆえに富貴は貧賤の情実を知り、貧賤は富貴の挙動を目撃し、上下混同、情意相通じ、文化を下流の人に及ぼすべし。その得、四なり。一、文学はその興廃を国政とともにすべきものにあらず。百年以来、仏蘭西にて騒乱しきりに起り、政治しばしば革るといえど・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ゆえに富貴は貧賤の情実を知り、貧賤は富貴の挙動を目撃し、上下混同、情意相通じ、文化を下流の人に及ぼすべし。その得、四なり。一、文学はその興廃を国政とともにすべきものにあらず。百年以来、仏蘭西にて騒乱しきりに起り、政治しばしば革るといえど・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ことさらに富貴の人を嫌うて、貧賤を友とする者を見ず。その富貴上流の人に交るや、必ずしも彼の富貴を取りて我に利するに非ざれども、おのずからこれに接して快きものあればなり。なお俗間の婦女子が俳優を悦び、男子が芸妓を愛するが如し。そのこれを愛する・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
出典:青空文庫